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自作曲備忘録

別に読まなくてもいい自作曲の設定とか妄想とか。

大したこと書いてません。自分用メモ。

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妖幽霊奇譚(世界観)

死後の世界のお話。
主人公は神威。

神威は最近妖になった新参者。
紫、水木、そして自分自身も、何の妖なのかは未だにわかっていない。
妖に為ったことについては、特に嫌な気持ちもなく、とりあえず生きてみるか、精神。
もう二回死んでるけど。
紫とは幽霊の時からの知り合い。
鈴奈と蓮夜に遊ばれることが多々。

水木は、昔紫の手によって妖となった一人。
元々紫が持っていた"幽霊を殺し妖に変える力"を受け継ぎ、紫の命で今までに妖に変えた数はそこそこ。(唄は紫自身が変えたため、水木の所業ではない。)
心が無いわけではなく、やはり幽霊を"殺す"という行為に関しては後ろめたさもあり、鈴奈、蓮夜、神威への複雑な感情を抱いており、たまに考え込んでしまう。

妖のトップの紫は、普段は力を潜め、幽霊の姿の時は"結月"を名乗り、神威と仲が良かった。
配下の水木、鈴奈、蓮夜、唄とともに"妖ノ闇夜宴"で騒ぐのが楽しい。
最初は一人だったが、水木と唄を妖にしてから、水木に力を与え、仲間を増やしていった。
匣遊び(魂を箱に入れて遊ぶこと)が好き。
宴が好き。配下のことも好き。

紫の側近の唄は、猫の妖。
落ち着いた声色で、敬語で話す。
基本的に優しいが、巫山戯て毒を吐くこともしばしば。
紫に従順で、他の妖に対しては紫と同じように接する。
なので神威をからかうことがたのしい。

鈴奈と蓮夜は、対の鏡の妖。
神威よりもかなり昔に妖になったが、容姿は幼くもちろん成長もしない。
神威のことは久しぶりの後輩という感覚で接しており、なんだかんだ可愛がっている。
割と息ピッタリ。鈴奈のちょっとした暴走を蓮夜が止める感じ。
ちなみに酒は普通に飲める。

妖幽霊奇譚 -神威-

……嗚呼、俺は死んだのか……?

「神威」
「ん? ああ、結月」
「まだ慣れない?」
 どうやらここは死後の世界で、俺たちは所謂、幽霊というものだそうだ。というもの、もなにも、あの幽霊なのだが。
「そんなすぐには慣れんさ。結月はもう死んで長いんだったか……」
「そうね……何年、何十年……ふふ、何百年かも」
「そんなに?」「そんなにね」
 そんなに歳をとっているようには全く見えない。幽霊は外見は変わらないのだろうか。結月は薄紫の髪を揺らし、俺の隣に座る。
「普段は何を?」
「私? そうね……何かしらね?」
「なんだそれ」
 ふふ、と笑う結月に、俺も微笑み返した。
「でも、ここではみんな色々やっているわ。例えばそうね……神威もやってみたらどうかしら?」
「何を?」
「あのね」
 そう言ったと思うと、結月にグイッと引き寄せられ、耳打ちをされた。
「浮き世はとっても辛くて儚いの。この常世は楽しいでしょう? 皆をこちらに導いてあげるの……」
「……」
「とか」
「とか?」
 なんだかよくわからないが、そんな人もここにはいるということだろうか。
「ええ。……先日ね、その役目を請け負っていた人が……居なくなったの」
「……は?」
「別に、それが危険な事というわけではないわ。そうじゃなくて……この常世では度々人が消えるのよ。突然、どこかに行ってしまうの。死ぬなんてことは常世ではないから、どこかにいるはずなのだけれど……」
「へぇ……」
 死なないのか、と、きっと常世では常識であろうことを知った。まだこちらに来て日が浅いから、常世の常識など知らないことばかりなのだ。
「どうかしら。その役目、やってみる……なんて?」
「……まあ、退屈しないならいいかな。やることもないしな」
「そうこなくっちゃ!」
 こちらにきて十数日、俺の常世での仕事が決まった。

*******

「もう! 褒めても何も出ないわよ!」
「いやいや、紫様は本当にお美しい!」
「あらもう! もう一杯いかが?」
 とても騒がしいが、それが宴と言うものだ。人の形をしたもの、そうでないもの、そもそも見えないもの。そんな者たちが騒ぎ散らかしている。月明かりが照らし、妖しい雰囲気が……と、言いたいところだが、今夜は朧月。いわゆる朧月夜というやつだ。妖しさは更に増すが、賑やかさでかき消されているようにも思える。
「ねえねえ、紫さまぁ――!」
 黄色い髪の少女が、紫と呼ばれる妖の元に千鳥足で向かっていった。
「ちょ、ちょっと鈴奈? 貴女呑みすぎ……」
「いーじゃないですかぁ――! 久しぶりに紫さまに会えたんだもの――! 嬉しいんですよぉ――!」
「おい鈴奈! 失礼だろ!」
 鈴奈と呼ばれる少女は、きっと酔いが冷めた時に何も覚えていないか、思い出して顔を青くするだろう。その鈴奈に注意をしたのは、鈴奈とよく似た少年だ。
「別に構わないわよ、蓮夜。鈴奈のこと、お願いね?」
「ほらぁ! 構わないって――」
「だぁ――――っ!! オレが構うの! 呑みすぎんな! 映すものも映せなくなんだろーが!」
「鈴奈ちゃんはぁ、いつもキラキラでピカピカの鏡です――」
「今は濁ってるね」
 なんだとぉ――! と、酔っぱらいの叫びを場に響かせる。蓮夜は恥ずかしさと呆れで顔を覆いながらため息をついている。
「鈴奈、蓮夜、落ち着きなさい?」
「あ、水木さん……」
「せっかくの宴なのだから、たくさん呑んでも構わないわ。けれど節度というものを考えなさい?」
「う、はぁい……」
 黒髪の綺麗な、水木と呼ばれる妖は、いかにも大人の女性という雰囲気を醸し出している。鈴奈と蓮夜に注意をし、紫の方へ寄る。
「……どうでしたか? 紫様……」
「ええ、順調よ。楽しみにしてなさい?」
「……紫様も、薄情なお方」
「そうかしら? 昔からよ?」
「そうでしたね。けれど……」
 水木は一呼吸置いて、また口を開く。
「私たちのことは、見捨てないでくださいね?」
「……」
「水木さん――! 紫さまぁ――! 何の話で――」
「だあああっ!! だーかーらー!! 鈴奈ちょっとこっち来い! 今お二人が話してるだろうが!」
「でもでもでも――!」
「はいはい回収回収――」
 騒ぎながらもズルズルと引きずられる鈴奈を見て笑う、紫と水木。
「……見捨てないわよ、水木」
「それを聞けて安心しました、紫様」

*******

「……なるほど」
 浮き世の人々を常世に導く仕事を始めてから、だいぶ経った。今ではもう慣れたもので、浮き世、常世共に顔見知りも多い。結月が言っていた『この常世では度々人が消えるのよ』という言葉の真相も、少しずつだがわかってきた。彼らは死んではいない、しかし幽霊ならざるものに変わっている。そう、妖に――。
「神威さん」
「ん?」
 少年が話しかけてきた。彼は数日前に常世に導いてやった者だ。
「なんか変なものが落ちてて……んーん、変じゃないんだけど……」
「? どういう……?」
 袖を引っ張られ、そのものが落ちているというところに連れられた。
「これ、変じゃない?」
「ああ、これは確かに……」
 そこには鏡が二つ。物として見ると、少し高そうな鏡と言ったところか、特におかしくはない。だがおかしいのは、こんなところに落ちている……いや、置いてあるということだ。
「なんか嫌な感じがして……」
「そうだな……」
 これが妖というものなのだろうか、といったように、なんとなく妖しく感じる。
「教えてくれてありがとう。これはなんとかしてみるよ」
「うん、ありがとう神威さん!」
 笑顔で手を振って去る少年に、俺も手を振り返した。――さて、
【くすくす】
【ようやくオレたちを見てくれたね?】
【ね】
「っ!?」
 鏡から二つの声がする。少年と少女の、妖しくも快活で、頭に響く声だ。
「どうも、神威さん」
 気付くと鏡はない。そして先程の声の主の少年、そしてもう一人の少女が目の前に現れる。
「お前たちは……?」
「あれ、紫様から聞いてない?」
「バッカ鈴奈、この人は紫様のこと知らないだろ」
「あれ、そうだっけ?」
 そうだよ! と、鈴奈と呼ばれる少女に対して少年が言う。
「ともかく! 言われたことをするまで! いくよ蓮夜!」
「お前なぁ……」
 二人がそう言うと、突然なにかに飲み込まれる感覚で意識が飛びそうになる。
「は……!? なん、だ……!?」
「「ようこそ、妖の世界へ――」」


 気がつくと、見たことのない場所に立っていた。
「ほらほら――! しっかり、神威さん!」
 少女が言う。
「ここからはオレたちじゃなくて……」
 少年も言う。
「「ね、水木さん?」」
「ええ、そうね。」
 二人に応える女の声が、突然後ろから聞こえた。とっさに振り向くと、黒髪で桃色の着物を着た女性が嫌な笑みを浮かべていた。
「突然ごめんなさいね? でも主の命なの。とりあえず貴方を――」
「待て、待ってくれ……どうなってるんだ……お前たちは一体……」
 俺の問いに、少年と少女がすぐに答えた。
「私たちはね、紫様に仕える妖。私は鈴奈」
「オレは蓮夜」
「紫様……? 主……? それが一体俺に何の用が……」
 知らない妖が三人現れただけでも混乱するというのに、主だの紫様だの言われてもうわけがわからない。
「……お前たちは、幽霊が突然消えるという事象に関係があるのか……?」
「あるから、来たのよ」
「……」
 女性は口を開く。
「私は水木。紫様の命で、貴方を妖に変えるわ」
「は!? どういう――」
「一度死んでみなさい」

*******

「死んだ?」
「いや死なないから、ここ常世だから」
「あ、そっか。もう死んでるんだっけ」
 意識が戻ってすぐ、あの快活な少年と少女の声が聞こえた。この声はやはり頭に響く。痛い。
「「おめでとう――!」」
「今日から晴れて妖の仲間入り――!」
「永遠の命! 死んでるけど!」
 ああ、うるさい。なんだこの二人は。……って、今なんて……?
「……妖? どういうことだ、おい……!」
「それは私が説明してあげるわ、神威」
 妖の三人とは別の、聞き慣れた声が耳に届く。この声はそう――
「「紫様!」」
「ええ、貴女がいらっしゃるとは思わなかったけれど……?」
「いいのよ水木、どうせもうバレてるわ」
 妖が紫様と呼んだその先に居たのは……
「ゆ、結月……」
「元気そうね、神威」
「これのどこが元気だと……今目を覚ましたばかりだ。そんなことより、お前は……」
 結月……いや、紫は真剣な表情で語り始める。
「妖が集まるとね、力となるのよ。『妖ノ闇夜宴』って、聞いたことあるかしら? 賑やかで楽しいわよ。宴では妖がたくさん集まる、あとはわかるでしょう?」
「……そういうことか」
「そういうこと」
「……はは、まんまとはめられたわけだ。お前の力のために利用されたと?」
 最初から、こいつは目的があって俺に近づいてきたわけだ。それを全く疑いもしない俺も俺だが……。
「人聞きが悪いわね。それだけじゃないわ。幽霊は死なないけれど、力はどんどん失っていくわ。けれど妖は違う。私がもう何百年も変わらず過ごせているのは、妖だからよ」
 幽霊は老いないと思っていたのだが、そういうことではなかったらしい。
「さあ、そろそろ立ちなさい。今日は貴方が妖になった日、記念すべき日よ」
「……まあ、特に不便はしなさそうだが」
「ふふ、そうでしょう?」

「いらっしゃい、ようこそこちらの世界へ。妖の〝神威〟よ――」

妖幽霊奇譚 -神威-  了

妖幽霊奇譚 -光る箱-

「水木~! 匣遊びにも飽きたわぁ~」
「……またそのような遊びをしていらっしゃるのですか?」
 珍しく呑みすぎた主に呆れていると、鈴奈と蓮夜も珍しそうに寄ってきた。
「あ! 紫様ってば、その魂って私が持ってきた子じゃないですか!」
「……珍しい、こんなに酔っ払ってる紫様を見るのっていつぶりだろ……オレ生きてる間にあと何回見れるかな」
「あれ、なんだっけ……写真? 撮れる絡繰ある?」
「撮ろうと思ってるのかよ……」
 仄暗く遠くも見えなさそうな灯りの紫色は、主を一層美しく見せる。
 今宵の妖ノ闇夜宴は、いつにも増して賑やかだ。……きっと原因は主一択だが。
「なんかなあ、一面だけ光る箱があるんだよ。文字が書いてあったり、触るとその文字が消えて別の文字が出てきたり」
 最近の浮き世では写真なるものが流行っていると聞く。浮き世のものが常世に来るまではかなりの年月を要する。……と言っても、我々妖からすると、かなりの年月ですら一生のほんの一瞬でしかない。
「……不思議ねぇ、浮き世の人間はどうしてそんなものが作れるのかしら」
「技術に関しては浮き世は凄まじいですよね」
「で、蓮夜写真は?」
「聞けよ」
 蓮夜が手にしたそれはどこから拾ってきたものかはわからないが、我々には到底思いつきもしないものだった。
「それってあれだろ」
 後ろのほうから低い声がする。振り向いた鈴奈と蓮夜は、
「「神威じゃん」」
「……明らかに俺のほうが大きいのに呼び捨てなんだな」
 見た目は二人より年上で、新入りの神威を声を揃えて呼び迎えた。
「え? 神威は神威でしょ?」
「後輩後輩」
「お前ら本当に鏡みたいにそっくりだな」
「神威はその光る箱のこと知ってるってこと?」
「俺の話は無視か」
 鈴奈の突っ走る会話の調子にも少しずつ慣れてきたらしい神威は歯切れよく返した。
「まあ知ってる。すまあとふぉんというらしい。日本の言葉ではない」
「「へぇ~わかんないや」」
「お前ら本当に息が揃うな」
「あら神威~! 貴方もこちらに来て呑みましょ~!」
「ゆづ……紫、お前は呑みすぎだ」
 いつもこのたくさんの妖を従えている紫様も、酒に呑まれてしまうと鈴奈と似ている。少し微笑ましい。
 紫様に対する神威の馴れ馴れしさにも慣れた。元は幽霊として紫様と接点が大きかったからか、妖となってもそれは健在らしい。
「……神威様」
「あ、えっと…… ……あ、唄」
「今、自分の名前を忘れましたね?」
「あ、いやそういうわけじゃ……」
 紫様とよく似た色の側近。彼女が口を開くことは、他の妖に比べるととても珍しい。
「そういうわけですか。かしこまりました」
「だってほとんど話したことないだろ……」
「そうですね」
 表情のあまり変わらない唄は、焦る神威に踊らされず淡々と返した。
「すまあとふぉんというものは、写真のみならず、文通や電話も出来るそうで」
 そう言って唄が取り出したものは、もう一つのすまあとふぉんのようで、色形が神威のそれと多少異なっていた。
「この記号の羅列を共有すれば、出来るそうですよ」
「へぇ……」
「……興味が無いようでございますね」
「違うって」
 あたりの強い唄に、負けじと返す神威。見た目年齢がかなり離れているので親子のようだ。
「神威は興味が無いのではなく、理解に時間がかかっているだけでは?」
 神威を庇うように口を開いたが、神威の表情は晴れていないようで、
「……当たってるが、その言い回しは妙に腹が立つな」
 と、言い返されてしまった。
「あら、大丈夫よ。私もわからないことだらけだもの」
「水木様、神威様を擁護しなくで良いのですよ」
「あら」
「唄、俺を攻撃している自覚はあったのか」
「さて、いかがでしょうね」
 解せないんだが? と、私と唄に遊ばれているような感覚になったのか、なんとも不満そうな顔を見せた。
「で、写真ってどうやるんだ?」
「蓮夜様……こちらの映写機の絵に触れれば……はい」
「わ、すげー……映ってる!」
「こちらの丸を押せば撮れますよ」
「お……? これは撮れた? 撮れたのか? 写真は出てくるのか?」
「いえ、こちらの写真の絵に触れれば……保管されております」
「何枚も並んでる! なんだこれ……画期的だ……」
「えー! 私も写真撮りたい! 紫様の写真!」
「紫に殺されても知らんぞ」
「紫様はそんなことしない!」
「どうだか……水木に俺を殺すよう命じただろう」
「……」
 ……そう、神威は私が殺した。幽霊の神威は、だが。
「私に幽霊の存在を消すことは出来ません。殺す、だなんて物騒な言葉はよしなさいな」
「……俺ははっきりと殺された感覚はあったがな」
 私のその行動は、意識を飛ばし、〝死んだ〟という感覚を残すことは出来るようで、不快感を含んだ睨みを飛ばしてきた。
「嫌だったかしら。……そうね、嫌がらない者は居ないわね。私は〝殺す〟ことしか出来ないもの」
「いや、何もそこまでは――」
「いいのよ。力しか無いことは、自分が十分わかっているわ。それを生かしてくれるのも、紫様だけなの」
「……水木、本当にお前は――」
 そう言いかけた神威の言葉を遮ったのは、カシャ、という音と同時に放たれた閃光。
「「……」」
 何が起きたのか把握出来ない私と神威に、
「何の話ですか?」
「なんかすごく真剣な感じだけど……、あ、鈴奈どう?」
「うーん……とても、微妙」
「暗いところじゃ上手くいかないのかなあ……」
 鈴奈と蓮夜は話し始め、まだあの絡繰を触っていた。
「お前ら……は、」
「?」
「何?」
 口を一瞬閉じた神威は、すぐまた口を開き、
「……いや、なんでも。楽しそうだな」
「うん、面白い!」
「不思議が詰まってんなー、このすまあとふぉんってやつ」
「俺にも貸してくれ」
 二人の中に紛れていく神威の背中は、まだ幽霊らしさを残していた。
「……水木様?」
「……唄、私は……間違ってなかったわよね……」
 鈴奈、蓮夜、二人もまた、私が〝殺した〟子たちだから、きっと神威はそれを聞きたかった。
 聞かなかった。
「……間違えていたら、私はきっと、あの子たちの傍には居られないわ」
「間違えておりませんよ。あんなに楽しそうではありませんか」
「……そうね」
 笑顔の彼らを見るのは、心が痛む。
「水木様、行きましょうか。鈴奈様が……ほら、」
「水木様〜! 唄様〜! 一緒に写真撮りましょう! ね!」
「……呼んでいます」
「……そうね」
 きっとそう、結果は誰にも分からないものだ。
 運命を変えてしまうほどのことでも、それを幸せと思って貰えるなら、この力を紫様のために使うべきだと。
 おぞましいこの力を、殺さなくていいと、あの笑顔は言っていた。

偽物ナイフ(世界観)

阿久津未羽(あくつみはね)という、何度死んでもまた同じ時間をやり直すことになっている少女と、皆方翔(みなかたしょう)という、途中からそれに気付く青年の話。

未羽は何度も何度も自殺を繰り返し、何度も何度もまた同じ時間に戻される。
どうしようもないと思っていると、それに気付いた翔に話しかけられる。

ループから抜け出せるのか……は、まだわからない(・ω・)

そんなお話。

偽物ナイフ

――綺麗な桜が、僕を苦しめる。

「お姉さん、なにしてるの?」
「……」
 視界が突然何かで覆われた。顔を上げると、男性が僕にハリボテの笑顔を向けている。今、この人に声をかけられたような気がする。
「寒くないの? 桜が咲いているとはいえ、今日は冷えるし。ここは公園だし、ずっとこのベンチに座ってるよね?」
「……あの、」
「あ、ほら指赤いし! 冷えてるでしょ絶対!」
「……構わないでください」
 僕の声を聞こうともせず、この人はベラベラと喋っている。
「カイロあるから使って――」
「ほっといて!!」
 ……ついに怒鳴ってしまった。こうして何度も話しかけられると、生きている自分を知ってしまう。ずっと待っているのに、それを自ら拒もうとしてしまう。
「……どうしたの。ねぇ、」
「……」
「泣いてるよ、ミハネ」
「……また覚えてるの?」
「三回目」
「……あの時から、なんで……」
「ミハネは何回目なの」
 何度も何度も繰り返して、数えることも無くなったから、
「覚えてないよ……」
 と、素直に答えた。
「……三度目の正直って言うでしょ。ミハネを今度こそ死なせない。だから、」
「死なせてよ」
「嫌だよ! もうどこにも行かないでよ! オレが――」
「ごめん」
「あっ、ちょっ……ミハネ!」
 またあの約束を言われた。忘れてると思ってた。でも覚えてた。

 スマホの連絡先に彼は居ない。同じ日をやり直した後に、彼には何度か出会った。だから今は居ない。
 確かそう、彼の名前はショウ。連絡先を登録した時に書いてあったのを覚えている。
「……また、どうせ同じ」
 死んでしまおう。何度目の決意だろうか、僕は学校の屋上に足を運んだ。

「ミハネ!」
 二階と三階の踊り場、また彼がいた。
「……ここ、学校なんだけど」
「え、うん」
「不法侵入?」
 明らかにこの学校の制服を着ていない彼に、純粋な感情をぶつけた。パーカーを着ていて、着崩している生徒の可能性は否めない。
「オレここの三年生。ミハネはうちの制服着てるから、後輩だと思ってた。何年生?」
「……一年生」
 先輩に見えない先輩だった。これが先輩か。
「で、どこ行くの? 一年生の教室って二階でしょ」
「……止めないで欲しい」
「止める」
「……なんで」
「また死ぬつもり? オレもう見たくないよ」
「ほっといてって」
 歩き出して屋上に出た僕の手を、彼が勢いよく掴んだらしく、一歩後ろに引き戻された。
「――っ、なんで……」
「約束覚えてないの?」
「……」
「オレ、どこにも行かないでって言ったよね」
「……覚えて、ないよ……そんな約束……!」
「嘘言わないで!」
「うるさい!!」
 振り返ると、見たこともないくらい目を見開いて僕を見ているショウがいた。
 そんなことはどうでもよくて、しつこいくらいのショウに、我慢がならなくなった僕は、今までで出したことの無いくらいの大声を屋上に響かせた。
「うるさい! ショウは僕がどれくらい苦しいか知らないくせに! もうこんな世界に未練なんてない! 早く死にたいの! ……なのに、なんで……なんで何度も何度も……生きたくない、でももう死ぬのも嫌だ……嫌だよ……」
「ミハネ……」
「……助けてよ」
 勢いよく吐き出した本音が、もう僕の中には戻ってくれないことはわかっていても、それでも隠すようにうずくまった。
 何度も何度も死んで、何度も何度も生きて、繰り返して辿り着いたのが、こんな人に救いを求めることだった。
「なんとかする。ミハネとオレならきっと……」
「……あんまり信じられない」
「えー……」
「じゃあ、僕をこのループから救って、死なせて」
 どうしてこんなお願いを、他人にしてるのかはよくわからない。けれど、もういっぱいいっぱいなのは本当だった。
「……それは……あんまりやりたくない」
「生きたくないの」
「……生きるっていう選択肢は……」
 とっくに捨てていたものを、ショウが望んでいたとしても、僕の人生は僕のものだと、そう誰かが言っていた言葉の方が、今の僕は信じている。
「……無いよ。そのために僕は、死に続けてるんだから」
「……」
「ごめんね、やっぱり自力でなんとかするよ」
「どうやって――」
「さよなら」
 立ち上がって屋上の柵に向かった。後ろでショウが僕を止めようと何かを言っているのはわかった。僕は足をとめずに進み続けた。

「ショウ」
 最期に振り返った時、ショウは泣いていた。彼もこのループに巻き込まれた人。
「ありがとう」
 そう言った。
 偽物の言葉で僕を突き刺して、終わらせるために足を空に運んだ。

❀✿❀✿❀✿❀✿❀✿

 満開の桜が、残酷なくらい綺麗だ。

ミスタアミステリ(世界観)

主人公は探偵。
「キミ」というのは犯人のこと。

主人公は言葉使うのが上手く、真実を告げると大体の犯人は発狂して事件が終わる。

ミスタアミステリというのは、
・事件解決だからミステリー
・主人公が関わるといつも犯人が発狂
・彼の言葉には何かがあるのではないか
という、探偵自身もミステリーな存在だという意味を込めてられている。

ミスタアミステリがなぜ犯人と真実がすぐわかってしまうのかも、ミステリー。

そんなお話。

流転鈴音(世界観)

もう動かない、捨てられた人形の話。

本当は動いて、遊んでくれた彼に話しかけたい。
でも金属部分は錆つき、自分の想いは伝わらない。

そんなお話。

関連曲:「ただ想うばかり」