『二人の日常会話』|狂愛劇場

「は? ナメてんの?」
 街を歩いていた時に貰った号外の新聞を手にし、思わず口に出す。相方の淹れてくれたお紅茶を右手に、新聞を左手に。
「人のこと言えないでしょ、ブランシェット」
 懲りずにまた事件を起こす狼さんに対して言ったつもりだったが、相方はやれやれと言ったふうにわたしに言葉を投げた。
「アシュリーは共犯でしょう? 人のことを言えないのはわたしだけじゃないわ」
「そうだねえ……。それにしても、何回目かな? 俺はもう数えるのやめた」
「わたしたちだって自分たちのこと数えてないじゃない。数える必要なんてないわ」
 そうかもね、と苦笑する相方本人も、最初は数えていたらしいが。そもそも罪に手を染めているのはわたしだ。共犯とは言ったものの、アシュリー本人が直接手を汚すことはしない。まあ、別にわたしがそうしたいからそうしているだけだが。
「で? 次の人は決まったの?」
「さーぁね、向こうだってわたしたちのせいにしているし、わたしたちだって向こうのせいにしてるんだから、こんな頻繁に事件なんて起こったら、たまったもんじゃないでしょ」
「つまり、もう少し待つと?」
「そういうこと」
 残念だなあ、と呟くアシュリーに、残念だなと思うわたし。目的は違えど同じことを思う。
「まあ、でもそろそろ狼さんを殺したいわ」
「ブランシェットのそれは……仇討ち、だろ?」
「そうよ、あくまでも仇討ち。それ以外のなんでもないわ」
「……まあ、俺は誰を殺そうが知ったことじゃないけどね。誰でも良いよ」
「わたしだって普段なら誰だって構わないわ」
「はは、やっぱり俺たち馬が合うんだね?」
 そうかしら? と軽く返し、お紅茶を飲み干す。
「ごちそうさま。アシュリーの淹れるお紅茶は美味しい」
「それはお粗末様」
「……また明日も淹れてほしいわ」
「もちろん」
 わたしたちはお互いの秘密を知っている。知っていて、あえて触れない。それでいい。だって今話しているわたしたちは、今のわたしたちの他に何者でもないから。